千葉地方裁判所 昭和46年(モ)415号 判決 1972年9月02日
申立人
日本国有鉄道
右代表者
磯崎叡
右代理人
田中治彦
外八名
被申立人
国鉄動力車労働組合
右代表者
目黒今朝次郎
被申立人
国鉄動力車労働組合千葉地方本部
右代表者
篠原正男
被申立人
国鉄動力車労働組合千葉地方本部千葉支部
右代表者
中野洋
右被申立人三名代理人
加藤雅友
外二名
主文
千葉地方裁判所が、昭和四六年五月一七日、同裁判所昭和四六年(ヨ)第一一八号仮処分申請事件についてなした仮処分決定は、これを取消す。
訴訟費用は被申立人らの負担とする。
この判決は第一項にかぎりかりに執行することができる。
事実《省略》
理由
一被申立人らの申請に基づき千葉地方裁判所が、昭和四六年五月一七日、同裁判所昭和四六年(ヨ)第一一八号仮処分申請事件につき別紙記載のとおりの仮処分決定(以下本件仮処分決定という)をなしたことは当裁判所に顕著な事実である。
二そこで本件仮処分決定を取消すべき事情の変更が存するか否かにつき判断することとする。
本件仮処分決定主文と<証拠>とを総合すると、被申立人らは、昭和四六年五月一八日早朝よりいわゆる春闘行動に入ろうと企図していたところ、その前日一七日被申立人組合千葉地方本部は申立人から右行動を中止しない場合は鉄道用地への立入りを禁止するとともに、集会などを含めて具体的な「不法行為」が発生した場合は構外排除の措置をとる旨の通告を受け、右鉄道用地内にある組合事務所の使用が妨害されるおそれを生じたところから、かかる事態を未然に防止するため、右組合事務所の使用妨害の禁止と従来から許されていた右事務所にいたる正門からの通行の確保を求めて、千葉地方裁判所にその旨の仮処分申請をなした結果、本件仮処分決定がなされたものであることが認められる。
従つて本件仮処分決定はもともと右いわゆる春闘時における申立人による一時的な組合事務所の使用妨害を予防するのをその趣旨としたものであると解されるうえ、<証拠>によれば争議時等においては本件仮処分後申立人の設置した裏門が使用されるがそれ以外の平常時においては右裏門を閉鎖し従来同様組合事務所にいたる通行は正門から行われ、従つて右いわゆる春闘終了後労使関係が平常に復した現時点においては被申立人らは何らの支障もなく正門を通行して組合事務所の使用をなし得ていることが認められ、右認定に反する証拠はない。以上によれば現時点においては、本件仮処分の理由および必要はすでに消滅(事情変更)しているものといわなければならない。
なお、申立人の主張中、裏門を新設したから今後は闘争時においても組合事務所の使用は妨げられないとのことをもつて本件仮処分の事情変更の事由となしているやにに解される点は、そのこと自体将来の紛争時における事柄に属することであつて、本件仮処分における事情変更とは直接かかわりのないものであるというべきである。また被申立人らは、申立人の労働組合活動の自由を否認し団結権を否認する労務管理政策に何らの変更もない以上たとえ裏門を設置されても意味がなく事情変更は存しないと主張するが、具体的に現時点においては何らの支障なく組合事務所を使用し得るのであるし、今後の紛争時におけることは、前記春闘時を前提としてなされた本件仮処分とは直接かかわりのないことであるから右主張は採用することができない。
三よつて申立人の本件申立は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九三条本文、八九条を、仮執行の宣言につき同法七五六条の二を適用して主文のとおり判決する。
(渡辺桂二 鈴木禧八 矢崎正彦)